HARD THINGS

アンドリーセン・ホロウィッツのベン・ホロウィッツさんが書いた、「HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」 が日本でもベストセラーになっている。
(原題: The Hard Thing About Hard Things – Building a Business When There Are No Easy Answers / Ben Horowitz)

 

ゴールデンウィークに読むには持ってこいの、自叙伝的なドキュメンタリーだ。(平日に読むと引き込まれ過ぎるのと、日常の経営業務に類似点がありすぎて、考えにふけってしまうので注意だ。)

 

マーク・アンドリーセンのネットスケープに入り、ネットスケープがAOLに売却されて後に、マークと共にテックスタートアップを創業し、ドットコムバブルの崩壊、会計事務所の裏切り、自社の分社化などの紆余曲折を経ながら、最終的には16.5億ドルでHPに会社を売却するという成功までの苦悩が書かれている。
というか、全編通じて、苦悩しか書かれていない。

 

売却関連の記述については、16.5億ドルという規模が大きすぎて同じ感覚は持てないものの、それ以外の苦悩については誰もが似た体験があると思う。
奥歯を噛み締めながら、緊張して読み進めてしまう。
とにかく苦悩の連続で、規模こそ違え同様の難題を抱えている経営者諸氏には、多くの示唆を与えてくれる。あるいは自分の人生はラクだなとさえ思ってしまうかもしれない。

 

プロダクトの中身や市場動向についての記述は案外少なく、家族、取締役、幹部社員、社員、メンターなど、周りの人についての叙述が多い。

 

自分や自社と照らし合わせながら読み進めるため、少し読んでは立ち止まるの繰り返しとなる。特に以下の項は、体に悪い。

・親友を降格させる時
・なぜ部下を教育すべきなのか
・友達の会社から採用して良いか
・経営的負債
・正しい野心
・肩書と昇進
・「ワン」型CEOと「ツー」型CEO
・平時のCEOと戦時のSEO

 

敢えて言えば、多くの書評が出ていてその大半が「記述が具体的で面白い」といったものだが、僕はもっと具体的でもいいのにという感想をもった。同じ感想をもつ場合には、既に膨大なアドバイス・示唆が蓄積されている彼のブログを読むのが良いのかもしれない。
Ben Horowitz : Ben’s Blog http://www.bhorowitz.com/

 
また、本書内で何度も言及されているインテルのアンディ・グローヴの著書も合わせて(Hard Thingsのあとに)読むとより彼の世界観がわかるかと思う。